2015年7月17日金曜日

日本国憲法前文っていいよね。当時の人間の願いと覚悟が匂ってくる。

最近は、憲法と国家安全保障について語られている記事をタイムラインでよく目にします。関心を持っている人が多いようですね。

私は日本国憲法の前文が好きです。全部載っけちゃいますね。

******

『日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し

政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。

これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。

日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。

われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。

われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。

日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。』

*******

日本国憲法は昭和21年11月3日に公布されました。表現は少々堅いけど、私はこの文章から、当時を懸命に生き抜いた人たちの素直な想いを感じ取ります。それはきっと、70年後の私たちがポジショニングしながら小手先の理屈で組み立てた言葉ではないからです。

人間と人間が互いに削ぎ合った血肉の渦に、どうしようもなく自ら身を投じて呑み込まれていくような、熱量の夥しい体感と連帯。怖れを動機とした共依存は極まって、国家と自我を同化させる正当性は自滅しました。国は人なり、決して、人は国なりではない。一人一人が世界観を自立させなければならない。日本社会の再生は、人間(自己)の理性を信頼する歩みから始めなければならない。戦争体験はそのような自覚を、日本列島に住む人々にもたらしたはずです。

日本国憲法の前文は、理性を信じるリーダーによって純粋に綴られた言葉であると思います。人類史最悪の国家戦争をくぐり抜けた人々が、生存と実存の限りを懸けて至った自覚であり、後世の人間社会に伝えるべき「願い」と「覚悟」を総括した文献であると言って差し支えない思います。



そういえば、日本国首相の公式サイトには憲法改正について書かれているのをご存知でしょうか。2009年06月12日に書かれたものです。文末には関連資料として、平成17年に提案された自民党新憲法草案が紹介されています。

読んでみて、ちょっとした感想を。


うすい。


法の精神性が如実に表れる前文を、現憲法のそれと比較したとき。
自民党草案はまったくもって貧弱で、薄く、軽く、浅い。

真に迫るような、命懸けの人間による願いと覚悟。人類の過去と未来を背負って代表して語ろうとする公正さと誠実さ。国家主義の物語に自我の怖れを同化させるがゆえに大量殺戮の連鎖が起こる、という戦争現象のメカニズムの理解

それらが、滲み出ていない。匂ってこない。響いてこない。
文言から伝わってくる内容の質量、密度、濃度、深み・・・
自民党草案は、現憲法の前文と見比べると全く勝負になっていません。

そう感じてしまうんですね。
感じてしまうのものは仕方ありません。
でもこの印象の違いは何だろうかと。

独断と偏見を承知で私の仮説を言わせてもらえば、
日本国憲法の精神を語る人物の、精神的な拠り所の違いです

語り手の語る意識が、「人間の存在」を起点に思考しているのか。
「日本国家の物語」を起点に思考しているのか。

それは語り手の思考を支えるアイデンティティの違いであり、
アイデンティティを支える世界観の違いであり、
世界に対して自分はどうありたいのか、という生きる動機の違いです。


私は「国家」を重んじるのではなく、「国家を重んじる人の心」を重んじています。
そして法に従う者ではなく、法の精神を重んじる者です。

細かい条文の是非については語りません。重要な問題であるほど、二番目以下の内容についてはどうこう語らずに放っておくタイプです。そして一番大事なことは、制度ではなく、精神性を読み解こうとすれば分かると思っています。

憲法改正に関する私見は以上です。

よく聞いて、仮説が観えて、自分がどうありたいのか定まれば、よく伝える。
対話あるのみです。
http://www.sabe.or.jp/wp-content/uploads/constitutiondraft.pdf

0 件のコメント:

コメントを投稿