オリンピック招致のプレゼンを見たんですが、驚きました。
安倍さんの言葉に。
「汚染水による影響は、第一原発の港湾内の0.3平方km範囲内の中で完全にブロックされています」
初耳なんですけど!
いつの間に事態は解決していたんだろう。
安倍首相:汚染水「完全にブロック」発言、東電と食い違い (毎日新聞9/9)
安倍晋三首相が、7日にアルゼンチン・ブエノスアイレスで行われた国際オリンピック委員会(IOC)総会の五輪招致プレゼンテーションで、福島第1原発の汚染水問題をめぐり、「完全にブロックされている」「コントロール下にある」と発言したことについて、「実態を正しく伝えていない」と疑問視する声が出ている。
9日に開かれた東京電力の記者会見で、報道陣から首相発言を裏付けるデータを求める質問が相次いだ。担当者は「一日も早く(状況を)安定させたい」と応じた上で、政府に真意を照会したことを明らかにするなど、認識の違いを見せた。~以下略~
この状況を安倍さんによる解釈だと、
汚染水は完全にブロックされて、コントロール下にあるそうです。
世界に笑顔で、断定して、そう説明していましたから。
さらにこうも言ってた。
「健康問題については、今までも、現在も、そして将来も、全く問題はない」
あなたは神様なのでしょうか、と言いたくなりました。率直な感想として。
僕は以前に信頼できそうな記事を読みました。
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福島原発周辺で「動植物異常」相次ぐ (東洋経済4/3)
チョウやニホンザルなどに異常、研究者が被曝影響と指摘 岡田広行
福島市や全村民が避難を余儀なくされている福島県飯舘村など、福島第一原原子力発電所からの放射性物質で汚染された地域で、動物や植物に異常が多く見られることが研究者による調査で明らかになった。
3月30日に東京大学内で開催された「原発災害と生物・人・地域社会」(主催:飯舘村放射能エコロジー研究会)で、東大や琉球大学などの研究者が、ほ乳類や鳥類、昆虫、植物から見つかった異常について報告した。
~中略~
大瀧准教授の研究では、驚くべき結果が判明した。
2011年5月の採集で、ほかの地域と比べて福島県内のヤマトシジミでは、羽のサイズが小さい個体が明らかに多いことがわかったのだ。「地面の放射線量と羽のサイズを比較したところ逆相関が見られ、線量が上がっていくにつれて羽のサイズが小さくなる傾向が見られた」と大瀧准教授はデータを用いて説明した。
また、捕獲した個体の子どもについて、「福島第一原発に近い地域ほど羽化までの日数が長くなる傾向が見られ、成長遅延が起きていたことがわかった」(大瀧准教授)。「親に異常があった場合、子どもでも異常率が高くなる結果も出た」とも大瀧准教授は語った。ただし、「これだけの実験では、遺伝性(異常がDNA損傷に基づくもの)であると断言するには十分な証拠とは言えない」とも説明した。
~以下略~
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こちらも参考になります。
ドイツZDFテレビ 「福島原発労働者の実態」 (字幕あり)
東電や医師にもインタビューしています。誠実な関心を以て調べてあると思います。
現実はどうだという判断はしかねることですが、
上で紹介した記事内容の認識をもって、少なくとも僕ならこう言うでしょう。
「放射線が人体に有害であることは科学的事実。被ばくによる健康被害の可能性は常にある」
「原発の地域の生態系調査、そして作業員の健康調査を公開することで、国民と世界に真実を分かち合う。それが私の責任である。真実から目を背けずに問題解決に尽くすと約束します」と。
安倍さんによれば、健康被害はこれまでだけでなく、未来においても全く問題ないそうですが、断定的に言い切れるはずありません。
このプレゼンを日本国民と世界はどう感じたのでしょうか。気になります。
沖縄の事業再生家である樋口耕太郎さんのツイートが印象的でした。
「福島第一原発の汚染水が完全にブロックされている」という言葉を本気で信じている人は、殆どいないのではないかと思う。
東京オリンピック開催決定で喜んでいる人は少なくない。その気持ちはもちろん私も理解できるのだが、それは「経済が活性化すれば、すなわちお金が手に入れば、世界中に嘘をついても構わない」という価値観を日本国民が共有しているという意味だろうか?
厳しい一言ですが、至極当然の指摘だと思います。
想像してみて下さい。
もしこれがオリンピック抜きに、
まったく同じ言葉で、
私たち日本人の不安解消に向けてなされた説明だったとしたらどうでしょうか。
なぜそんなこと言い切れるんだ!
公表されている事実やデータと全然違うじゃないか!
なぜ嘘をつくんだ!
と日本中から批判が起きるでしょう。真実を隠蔽せずに言うべき。国民の安全を何だと思っているんだと。
それが一転して、オリンピック招致を目的にした、世界が懸念する不安要素を払拭するためであれば許してしまう。
・・・まぁ誇張して言い過ぎてはいるけど、あえて批判はやめておこうか。オリンピックの為の発言だし。
仮にそんなムードに甘んじているのなら、
私たちは政治家のポジショントークや政局ゲームを正すことはできないでしょうね。
まったく同じことをしているのだから。
僕は日本こそ東アジアの精神的なリーダーを担ってほしいんですけど・・・
発展途上国ならいざ知らず、オリンピック招致に嘘をついてまで執着し、それを経済振興の第四の矢と評しているその姿は、残念ながら世界のリーダーに相応しいとは思えませんでした。
強者がそう振る舞えば、弱者も自己中心的にそう振る舞うものです。
愛国無罪という言葉があります。
国威発揚のためなら、愛国心からなら、嘘をついても構わない。
それはもう国家という観念に精神を依存しきっています。
僕はそういうの嫌いですね。
「君子、和して同せず」の精神が好きですから。
不確実なことについて、断定的に述べて勧誘することを、断定的判断の提供といいます。例えば金融商品取引法38条、商品先物取引法214条1号によって禁止行為として定められており、法律違反となります。
なぜ罪になるかって、詐欺に近いほど自己中心的で不誠実極まりないから。
僕は証券営業で数多くの金融商品をお客さんに提案してきました。株、債券、投信・・・
「絶対儲かります」と言えば金商法違反です。
日本国債すら「絶対に損しない」と言ってはなりません。これは投資に限りませんが、あらゆる提案は、発言者の認識する事実と解釈以上の域を出てはいけませんし、自己責任を負う覚悟と意思を採用する側に問いながらするものです。それが人として誠実だからです。
金商法38条(禁止行為)
顧客に対し、不確実な事項について断定的判断を提供し、又は確実であると誤解させるおそれのあることを告げて金融商品取引契約の締結の勧誘をする行為。
原発汚染水に対する外国の不安に、日本は「断定的な判断の提供」で答えました。
良い悪いをごちゃごちゃと言うつもりはありません。どう感じるのかを問いたいだけです。
僕も日本という共同体の一員です。
世界の不安と良識に向きあった対話において、
その代表者の姿勢があまりにも自分の生き方と信条に反しているだけでなく、
多くの人々に嘘を許容しているムードがあることに気分が悪くなった、
とブログで正直な思いを書き残しておきたくなりました。
あなたはそれでいいのか、と問う意味を込めて。
人間の特質としてポジティブな発想とネガティブな発想を同時に持つことは困難であるという分析があります。
オリンピックを喜び、経済効果に期待している気分に同調するほど、自らの嘘をつくことの意味について真剣に捉えにくいと言えます。嘘も方便で、笑顔のポジショントークもむしろ頼りがいがあるようにすら見えるかもしれませんね。
日本人は今後、原発の健康被害の可能性や汚染水に関する事実認識について、首相発言をベースにする気なのでしょうか。
東北の知人や友人が不安そうだったら、安倍さんの言葉を引用して答えようと思いますか?
いろいろ思うところがありますが、トータルで見て、
真実を軽んじる代償は決して小さくないだろうと考えます。
他の人がどうであろうと関係なく、
僕は僕の願う日本の未来のために、真実を重んじて生きていこうと思います。
関連「村上春樹さんの精神と、真実であることを重んじて」
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