覚えているでしょうか。
2004年~2006年当時、日本は新興市場バブル真っ盛りでした。
新興企業向けの株式市場ジャスダックの指数推移。yahoo financeより。
インターネットの電子商取引が一般化して、株式投資もオンライントレードが普及しました。以前と比較にならないほど簡便で低コストになり、新規の個人投資家が激増し、バブルは加速しました。新規上場株(IPO)はほぼ確実に公募価格を上回り、株式分割のニュースが発表された銘柄は軒並み上昇。そんな熱狂ムードを最も味方につけて、企業買収を次々に繰り返して急成長したのがライブドアです。
この企業がどのくらい派手だったかといえば、
①野球球団の買収計画を発表。近鉄バファローズを買って、仙台ライブドア・フェニックスをつくろうとしました。(結局、楽天になりました)
②前代未聞の株式100分割を実施。市場は大熱狂し、15営業日連続ストップ高となりました。
③フジテレビ買収をしかける。午前8時過ぎのわずか30分の間に700億円を投じ、時間外取引(市場は9時~15時)によって、親会社のニッポン放送株の35%強を取得して筆頭株主へ。売主はトヨタ。その資金調達は外資系証券会社リーマンブラザーズを介したMSCB、という奇策でした。
④社長に留まりながら、堀江さんは衆院選に出馬。小泉首相の郵政解散の選挙で、自民党の武部幹事長から「我が息子です」と紹介されながら演説に立ちました。
⑤証券取引法違反容疑で東京地検より強制捜査。ライブドア・ショックにより株式市場全体に個人投資家などからの大量の注文が殺到し、東証の売買システムの処理可能件数である450万件に迫ったことから異例の「全銘柄取引停止」措置。そしてライブドアは上場廃止。
振り返ってみても凄まじい話題提供力ですね。堀江さんは新世代の若き経営者として扱われ、マスメディアに出てはビジョンなり主張を語っていました。当時の僕は大学生だったわけですが、大学生といえば一度は起業家に憧れる人種です(違ったらすいません)。ライブドアと堀江さんのニュースには大いに刺激を受けていました。
経営権って、資本力ありきで強引に奪い合ったり、ひっくり返すものでもあるのか。
企業は誰のものか、というあちこちの議論を見ては考えさせられる。
一体何が起こってるのか?
時価総額、企業価値ってなんだろうか。
MSCBって何?一体その資金調達方法の何がどう悪いのだろうか。
敵対的買収とは?企業を売り買いする意味は?良い買収と悪い買収の違いは?
村上ファンドは何をしたのか。
風説の流布って?株価って操作できるのものなのか?どうやって?
そもそも株式って何だろう。
そもそも上場って何だろう。
これほど影響力のある金融とは、一体どういうものなのだろう?
テレビを見て、ネットで調べ、新聞を読んで。とにかく納得いく理解を求め続けました。
一方では、政治において小泉改革が勢いよく取り上げられていた頃。日本郵政公社は郵貯・簡保経由で国民から膨大な資金を集め、300兆円を超える規模で金融を行っていました。それは国民の余剰資金を、民間への融資ではなく、国・地方自治体・公社への公共事業へ融資する仕組みであり、公的金融の本丸です。小泉さんの郵政改革とは、いわばこの巨大な公的金融を民営化しようというものです。
マスメディアから流れる政治経済のムードを感じとって、金融が、社会を機能させる上で重大な役割を担っているように見えました。話に出てくる金額も○○兆円と大きいですしね。20年間生きてきた過程で、資本主義社会は個人も企業も政治も、お金の量がものを言うのだと感じていました。今はまったくそうは思わないんですけど。当時は社会の変化を自分の頭で納得するためには、金融というアプローチを深く知る必要がある気がしていたんです。大学での所属は政治経済学部、国際政治経済学科です。もともと政治経済を学ぶことへの関心は高かったところ、触発されて自発的に学ぶ情熱が地味に燃え続けました。
そうして経済と金融と企業について、考えることが習慣になりました。偉大な投資家であるバフェットを知ったのもこの頃です。
―経済の本質を理解したい。
―お金の本質を理解したい。
―社会をきちんと語れる人物でありたい。
―経済の真ん中だと感じた金融業界の、その真ん中に行ってみるのもいいかもしれない。
漠然とそう感じていました。
社会への関心は高いものの、地位や名誉や成功には興味が湧きません。ただ胸にあったのは、生きる上で、物事の本質を理解して、それと向き合う人間でありたい、という素朴な思いでした。
証券会社に入ったのは何故か。
自分は、誰の、どのようなシーンに貢献する生き方がしたいのか?と自分に問う。
社会で働くということに何を求めるのか?
この社会に自分のビジョンを持って向き合い、リスクを取り、切り開いていく。そんな事業家たちと接していたい。本音で語ってみたい。彼らの情熱的な真剣勝負に役立ちたい。
金融という広大で底の見えない可能性。
事業家という自ら切り開く精神と生き方。
それらを結びつけたのが証券でした。
生活のため、社会に貢献するため。
決して嘘ではありませんが、それ以上に、
自分の頭と心でこの社会を理解するために、僕は金融の世界へ行ったのです。
そういうわけで、堀江さんは僕に金融を志す背景を与えてくれた人です。尊敬や感謝の念を抱いたわけでもありませんが、ただ彼には正直な生き方を感じるので心に強く残っています。
あなたがそれを志した背景には何がありますか?どんな人がいましたか?
僕はそういう話が好きです。
0 件のコメント:
コメントを投稿