2013年5月18日土曜日

真実と愛を選択するリーダー

私には夢がある。いつの日かこの国が立ち上がり、「我々はすべての人々は平等に作られている事を、自明の真理と信じる」(アメリカ独立宣言)というこの国の信条を、真の意味で実現させることだ。――キング牧師

I have a dream that one day this nation will rise up and live out the true meaning of its creed: "We hold these truths to be self-evident: that all men are created equal."


1963 年の夏、25 万人もの人がワシントンの通りを埋め尽くし、キング牧師の演説に耳を傾けました。招待状が送られたわけではなく、告知するウェブサイトもない。キング牧師だけが偉大な演説家というわけでもない。彼はアメリカを変えるために何が必要かを説かず、自分が信じること、そして自分の願いを語りました。「I have a dream」と。彼が信じることを信じた人々が、彼の動機を自らの動機とし、他の人に伝えて広まり、その日その時に、彼の話を聴くために25 万人が集まったのです。聴衆の25 パーセントは白人でした。

キング牧師のために集まった人は一人もいません。自分がアメリカに対して信じることのため、自分のために訪れました。 そしてキング牧師も 「私には、夢がある」という演説をしたのであって、「私には、あなた方に貢献するプランがある」という演説をしたわけではありませんでした。


ここに、人を動かす、ということの本質があると思います。


人は、信じる枠組みにそって既に動いています。人々の動きの流れを変えたいのであれば、彼ら自身が信じる枠組みを変えることです。一般的には、危機感を与えたり、不安を強調したり、ルールをつくったり、アメとムチの取引をしたり、罪悪感に訴えたり、無力感を与えたりして、怖れの枠組みを強化します。しかし覇道のリーダーとは異なり、王道のリーダーであるキング牧師やガンジーはこの真逆です。

人は常に真実を求めています。リーダーは人々の求めている真実を照らすだけでいい。心を開き、自らの真実を行動で示す。それに感化されて、各々が自分の心の真実を問う。リーダーという存在が放つ情熱の火と理性の光によって、多くの人が自分と向き合うことを選択し、怖れや不安の枠組みが解かれていく。すると人々の信じる枠組みは自然に変化して、行動も変わります。自由、愛、尊厳。そういった人間の根幹に在る動機が、ますます機能していくようになる。社会はうねり、変革のときを迎える。かつて西欧で起こった民主主義への革命もまさにそうでした。

本来リーダーシップは、誰かを否定する必要はありません。正当化や嘘も不要です。自分の正直な思いを生きることによって、人の心を共振させます。怖れから偽ることをやめて、自分に正直になるだけです。それぞれが、それぞれの心の真実に向き合い、それらを現実へと引き出していく。この流れを誇り高く分かち合って、さらに共振のエネルギーは大きくなっていく。内なる真実に基づくとき、人間は必ず愛を選択するのではないでしょうか。どんなに世界が怖れにまみれていようと、リーダーはその真理を全く疑いません。


「私は失望するといつも思う。歴史を見れば真実と愛は常に勝利を収めた。暴君や殺人狂の為政者もいた。一時は彼らは無敵にさえ見える。だが結局は滅びているのだ。それを思う」 ―― ガンジー



この言葉が象徴しています。偉大なリーダーの戦略はたった一つ。愛を動機にして、自らの真実を示し続けることです。その根本は揺るぎないままに、多くの人々の怖れを取り除くように、自分が変わり続けることによって、彼らにも自らの意思で自身の真実を問うように促します。多くの人は、そんなリーダーの言動の力強さに惹きつけられます。一人の人間として社会と向き合い、打算や怖れがないからです。そのようなリーダーは、大義に同化を求める正義ではなく、生まれながらの自由と尊厳から、信念と世界観を語ります。キング牧師の「I have a dream」の演説は最も象徴的です。


リーダーシップによるムーブメントのメカニズムについては、たった3分でイメージできる動画があります。ご参考になれば。TED社会運動はどうやって起こすかデレク・シヴァーズ


もしあなたが本当に世界を変えたいと望むのであれば、愛と真実を選択する生き方が合理的です。その純度の高さが問われます。遅かれ早かれ、人がそれを選ぶのは歴史が示す通りです。怖れの幻想を看破し、正直な生き方を選択する人々が、次々と真実の現実化の連鎖を起こす。愛のリーダーシップによって、人間社会に真理のメカニズムが機能する。ガンジーはこれを見抜き、実践したのでしょう。

真のリーダーは生き方によって世界を変えましたが、変化の内容は重要ではありません。そして、変わる変わらない自体には本質はありません。どちらにしても、人々の自由意思の選択の結果であるのは変わりません。問題の本質は、変化を望む・望まない理由の真実です。「今なぜこのあり方なのか」という真の動機。それこそが、今の社会のあり方を決定しているのであり、変わる起点はそこにしかありません。
時代を変えたリーダーは、もともと人間に備わっている愛の真実に訴えて、それを選択する生き方を伝搬させたにすぎません。理性の光を取り戻せば、人は存在を分かち合うことの誇り高き安らぎを、既に知っているからです。ここへ向かうメカニズムは不変の法則として在るのですから、いつどのような時代になろうとも、悲観する必要は全くないと僕は思っています。


あなたが自分以外の誰かを変えたいと思うとき。

その動機は、自らの怖れや不安感からではなく、愛からですか?

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