2013年10月25日金曜日

前澤さんの決意を思う


樋口さんに当社でお話をしていただいた。
心の声が心の深くに入ってきた。
37年間の人生と15年間の経営者人生を振り返ると、そこには常に嘘があったと思う。
嘘のない人生を送りたい、愛のある人生を送りたい。
自分にとって一番大事なことは「愛」だと強く思った。

スタート・トゥデイ代表 前澤友作さんのtwitterより。


以下、樋口耕太郎さんのtwitterより。

スタートトゥデイの皆さんから、心のこもったメッセージを頂戴しました。
以下は、私からの返信です。

アインシュタインが洞察したように、
時間と空間は幻想で、 人は誰でも、時空を変化させる力を持っていると思います。

一昨日、昨日と、たった2日のことですが、人生の中のほんの数時間が、
その後の生き方、そしてその後、その人に触れるすべての人の人生を
永遠に変えるということは、ほぼ毎日、どの瞬間にも生じていることなのですが、

私たちは、その内なる偉大な力に目を向けず、自分の外側の何か、
お金だったり、仕事だったり、衣服だったり、
人からの注目だったり・・・が必要なんだと言う思い込みの中に生きています。

私はその社会常識の反対を生きたいと心から望んでいます。
それは、ご縁のある方のすべての接点において、
「いま、愛なら何をするだろうか?」を心に留め、
人と接するその瞬間に人生のすべてを凝縮するということです。

そのような素敵な瞬間に、皆さんとご一緒できて、幸福でした。

これもまた、私独特の考え方かもしれませんが、
私は、人を傷つけても構わないし、 人とどれだけケンカしても構わないと思っています。
もちろん、自分の不安を 相手に押し付けるような、
相手をいたずらに苦しめるような傷つけ方は論外ですが、

複数の人間が接点を持つとき、特に自分に正直に、人の懐に飛び込もうとすれば、
お互いの心に擦り傷ができるのは、当然のことだと思います。

それよりも、その後で、人と仲直りできること、それをきっかけに、
真に理解し合えること、心を共振させることの方が、遥かに重要で、
そこには、本当の勇気がいることだと思うのです。

逆に、相手を傷つけること、それ以上に自分が傷つくことを怖れて生きる人生は、
結局、肉体が物理的に接しているだけで、心は固い鎧の中。
本当の意味で、そこには 人間関係など存在しないのだと思うのです。

そのような視点で考えると、 職場であれ、夫婦であれ、親子であれ、
現代社会は人間関係がほとんど存在しません。

私は、心から人と接したいと望んでいます。
自分の鎧を捨てて、 覚悟を持って、勇気を振り絞って、
ご縁のあるすべての人に接しようと、 精一杯の努力を続けています。
それは、相手がどんなに「地位のある」人間であれ、 どれだけ「小さな」人であれ、
誰であれ、私にとってはまったく同じです。

ある人は自分が社長である、あるいは、母親である、と思っていますが、
それは単なる衣装にすぎません。私は、衣装にではなく、人と話がしたいのです。
それが私が人生に望むことのすべててで、そのような時間を過ごすことができて、
皆さんとご一緒できて、幸福でした。

人は誰でも、幸せになるために生きています。
そして、誰にとっても、 幸福になれる瞬間は、「いま」以外に存在しません。
幸福を先延ばしせず、 たったいま、人と向き合って、この瞬間に幸福である。
そんな生き方を これからも続けて行きたいと思っています。

お招き頂き、ありがとうございました。

――――――――――――――――

前澤さんは東証一部上場企業の経営者です。(スタート・トゥデイwikipediaリンク)
WBG Building Makuhari 2.jpg
(本社機能はワールドビジネスガーデン。
幕張に18年間住んでいたのでとても懐かしい光景です。

売上300億。社員350人。株式時価総額3000億。
そのリーダーである方の発言は社会的影響力のある重いものです。

37年間の人生と15年間の経営者人生を振り返ると、そこには常に嘘があったと思う。
嘘のない人生を送りたい、愛のある人生を送りたい。
自分にとって一番大事なことは「愛」だと強く思った。

人生を生き抜いた人間として、
志とプライドを以て挑戦し続けた経営者として、
資本主義経済における一流の成功を収めた事業家として、振り返って、
「そこには常に嘘があった」と公言するのは、一体どれほどの思いがあったのでしょうか。

これは、ただの反省のような言葉ではありません。
前澤さんの言葉には、もっと重く、深い決意がある。

上場企業としてのあり方と人間のあり方との矛盾。
これに、根本から、真っ向から、向き合いたいということ。
現に、上場企業経営者でありながら。


なぜそう言えるのか。

樋口さんは野村證券とレーサムリサーチで働いていました。
投資銀行部門のプロフェッショナルであり、上場企業の共同経営者でもありました。
そのキャリアを持ちながら、なぜ金融の道を辞め、沖縄で事業再生家を始めたのか。

その理由の一つが、上場という金融システムと資本の論理は、人間社会として持続性がないという理解と確信です。

この問題を論理的に説明したツイートがあります。
樋口さんのツイートの中で、最も多く(5万回以上)見られているものです。

企業最大の費用は人件費ではありません


―――以下はトリニティアップデイトの記事より引用―――

企業最大の費用は人件費ではありません。経営者のエゴです。
企業最大の費用(経営者のエゴ)が、一般的な企業金融論で全く語られていないのは、とても不幸なことです。

ホテル売買と企業金融
例えば、私が04年に買収したサンマリーナホテルは、当時築20年。建物躯体の経済耐用年数が仮に40年とすると、ホテルとして経営できるのはその時点であと20年ということになります。当時の取得額は約30億円。単純計算で、この投資額を経済耐用年数で回収するためには、少なくとも年間1.5億円(30億円÷20年)の税引後利益を生み出さなければ、事業そのものが持続性を持ちません。したがって、事業再生の第一のハードルはこの利益水準をいかに確保するかということでした。実質的に10年以上赤字経営だったサンマリーナは1年そこそこで2.3億円のキャッシュフロー(経常利益1.3億円)を生み出すようになり、巡航速度を取り戻し、「本当にいい会社」になるための第一歩を踏み出します。ところが、資本の原理に基づくと、2.3億円のキャッシュフローを生む「金融資産」は、とてもいい値段で転売可能です。私はホテルの売却に反対したため、臨時株主総会で解任され、サンマリーナは買収から僅か2年、約60億円で外資系に転売されました。問題はその顛末よりも、その後の従業員です。

同じ部屋数、同じ従業員、同じレストランで同じ顧客にサービスを提供し続けることに全く変化はありませんが、60億円で売却されたその日から、投資家が回収しなければならない資本の額は倍増します。すなわち年間3億円の利益を回収しなければ、いずれどこかで持続性を失うということです。年間1.5億円を稼ぐための売上が20億円だとすると、年間3億円を稼ぐために売上を40億円にすることは不可能ですので、当然にして人件費が徹底的に削られます。資本家にとっての事業再生は、従業員にとっての悪夢以外の何者でもありません。資本家は、30億円の利益を何の疑いもなく、「事業再生」の対価として自分の懐にするのですが、その本質は、250人の従業員が今後「20年」、(年間14万人として)280万人のお客様にお仕えすることの対価を現在価値にしたものだという真実は全く語られることはありません。事業が成功するほど回収するべき簿価が上がり、従業員の負担が増す。とても皮肉なことですが、ホテルの従業員は(ホテルに限りませんが)、自分と仲間の報酬と職を減らすために、日々相当な努力を強いられるという構造の元におかれているのです。

経営者のエゴは企業最大の費用
ホテルの事例はとてもわかりやすいのでよく引用するのですが、企業の株式上場における企業金融的なメカニズムはこれと全く同じです。株式上場は経営者の夢かもしれませんが、従業員にとっては「仕事のハードルが著しく高められる恣意的なイベント」以外の何者もありません。新規上場の注目株、高い初値、盛んな出来高、飛躍的な利益成長予想。これらはすべて、30億円のサンマリーナホテル(未公開企業)を60億円で売却(株式上場は実際、自分の会社を株式市場を通じて他人に売るということです)する経済効果と全く同じです。経営者は創業者「利得」を手にして、成功者として讃えられ、車を買い替え、銀座に繰り出し、自分の写真が表紙になった本を出し、雑誌のインタビューに頻繁に登場しますが、この人のエゴを満たすために何百という従業員が負担している莫大なコストを自覚するべきでしょう。

経営者のエゴが企業にとってどれだけ大きな費用であるか、簡単に計算できます。例えば、5億円の当期利益の企業がPER20倍、益利回り5%(当期利益÷時価総額)で上場すると、時価総額は100億円。投資家がこの会社に求める総合利回りが10%だとすると、経営者は(自覚しているか否かに関わらず)毎年5%の成長(5%成長+5%益利回り=10%総合利回り)を株式市場に約束して上場していることになります。この経営者のナイーブな「約束」によって、従業員が将来30年間で生み出すことを運命付けられた利益の合計額は、332億円。経営者が恣意的に決めた「5%成長」の一言には332億円の値札が付いているのです。
さて、時計の針を1月戻します。上場を控えた経営者に、証券会社の担当者が「アドバイス」しています。
「社長の実力を持ってすれば、5%成長なんて余りに弱気じゃないですか。御社のビジネスは時流に乗っていますし、他社よりずっと競争力があります。もっといい値段で上場しましょう。」「社長、それよりもなによりも、社員が上場を決断したのは、従業員のためだとおっしゃっていたじゃないですか。懸命にがんばっている従業員に報いるためにも、彼らがこの会社を誇りに思うためにも、この程度の株価ではだめです。」
かくして、この経営者は企業の事業計画を2.5%強気に修正して、成長予測を7.5%に書き換えます。同じ企業、同じ経営者、同じ従業員、同じ顧客。投資家の期待利回りが同じ10%(成長率7.5%+益利回り 2.5%)だとすると、上場株価は200億円(5億円の当期利益÷益利回り2.5%)と評価されます。社長は創業者利得を倍増させ、証券マンは社長から感謝され、社内では出世して行きます。さて、この経営者が「従業員の誇りのために」行った利益予測の「上方修正」によって、従業員が将来30年間で生み出すことを運命付けられた利益の合計額は、332億円から、実に517億円に上昇します。「誇り」のコストは185億円なのです。

――――――――――――――

樋口さんは自身の経験から、資本主義経済を知り尽くしています。
資本の論理の枠組みが、人の無意識と心と行動にどのように機能しているのかを理解しています。だからこそ、自らの使命として、新たな時代の金融のあり方、企業経営のあり方、共同体のあり方について、ビジョンと行動を示し続けているのだと思います。


そのような生き方と主張をし続けている人物に共鳴し、
上場企業経営者という立場を背負っていながら、
これまでの生き方を変えると公言したことの意味。


わかるでしょうか。

前澤さんの捨てる覚悟が。

何年も考え続けて(前澤さんは樋口さんと以前から面識がありますし、数年来のフォロワーでもあります)、自問自答をし続けて、内なる怖れと戦って、人生最大の決断をしたのだと思います。

生き方を変えるか否か。
自分の心に決着をつける為に、会社に樋口さんをお呼びしたのでしょう。そして同志であるスタートトゥデイの役員と社員にも聞いてもらったのでしょう。
これからの会社のあり方を、再び分かち合うために。


なぜ、それが分かるのか。


私もそうだったから。

私は、樋口さんに二度お会いしています。


一度目は、妻と結婚する前。
仕事について、生き方について、これで良いのかと考え続けていた。
辿り着いたブログは向かうべき道を示していた。一度会わねばならないと思った。
初めて会った未熟な若者に、快く時間をつくって下さり、
末金さんの麗王という店で朝まで話した。

金融という分野に、いま置かれている会社のこの立場で、自分を偽らずに挑むと決めた。


二度目は、本社に転勤後。子供が生まれる前。
一層に決めねばならなくなっていた。
自分と向き合い続けるほどに。既存の金融を肌で理解するほどに。
人生を変えるのか。変えないのか。
偽るのか。真実に生きるのか。
もう一度、会わねばならないと思った。

その後の、メールの返信の言葉は決して忘れません。
本当に厳しい言葉だった。しかしすぐに腑に落ちた。
そこから、あらゆる依存心を断ち切る生き方へと舵を切った。
自らの意志で。

人生で最も苦しい時期が続いた。
おかしくなったと思われもしたが、それでも迷いは無かった。

でも最後には、
支えてくれる家族がいた。
理解してくれる妻がいた。
愛してくれる子供がいた。

感謝しかない。幸せしかない。
それが今の心境です。

自分を偽らないこと、そして人間関係に向き合うことは、本当に勇気がいる。
傷つく。傷つけてしまう。
でもだからこそ、そこから逃げないことが、本当に生きるということなのだと思います。


今日は、樋口さんのツイートと前澤さんの決意を読んで、私自身の再生を振り返りました。

0 件のコメント:

コメントを投稿